― PASTOR ”Ｂ”こころのメモ ―　2011年 7月 3日 (ペテロの無花果(いちぢく))

アネモスガーデンの一角に無花果の木があった。夏には実が沢山なって教会の皆さんにも食べて頂いたものだった。しかし、一昨年の秋、病気なのか、虫が入ったのか分らないが、幹の真ん中から腐り始め、勢いがなくなり、枝からだんだんと枯れ行くようになった。これはもう直しようがないだろうと思ったので、地面の生え際から切り倒した。その時、細い小さな、小さな枝が株の脇から一本出ていたので、ひょっとするとこの小枝からこの木が再生するかもしれないと、私は期待をこめて、腐敗が根まで行く前に切った。あの小枝が今3～4本に増え、80センチくらいの大きさにまで成ってきた。まだ実はつけていないようだが、来年はきっと幾つかの実を付けてくれるだろうと思う。私は勝手にこの木を｢ペテロの無花果｣と名づけることにした。 　イエス様が指導者たちに捕らえられた夜、ペテロはイエス様が心配で大祭司の中庭までついていった。そこで｢あんたもあの先生の弟子だったね｣と言われた彼は恐怖のあまり、3度も「知らん！」とイエス様を否定した。ちょうどその時、イエス様の目と、ペテロの目が合った。ペテロは泣き崩れた。｢俺だけは、最後まで先生について行く｣と他の弟子を押しのけて、豪語したはずの自分だったのに、あまりにも情けなかったのだ。そんなペテロをイエス様はよく知っておられたのだろう、ペテロの大言壮語の後、｢私はあなたの信仰がなくならないようにあなたのために祈りました｣と語られた。自分の弱さと、醜さに打ちひしがれて、消え入りそうな人間をこの一つの言葉が生かした。枯れて終わってしまったかに見えた無花果の株に小さな枝が残って、復活したように、イエス様の言葉は、真っ暗闇の中に突き刺す一筋の光のように、希望と力を与えるものだ。それゆえ私はあの木をペテロの無花果と呼ぼう。